体育館の暑さで熱中症に
2018年7月、愛知県の小学1年生が熱射病の疑いで死亡したことがきっかけとなり、2018年以降、教室へのエアコン設置が進みました。現在では寒冷地をのぞいて設置がおおむね終わっています。
しかし、体育館への設置はまだまだ進んでいません。
2024年5月〜9月の全国の熱中症緊急搬送者数は9万7578人で過去最高でした。2024年は観測史上最も暑い年になりましたが、この傾向はますます深刻化しています。
エアコンのない体育館で運動中に熱中症になるケースも報告されており、体育館のエアコン設置が急がれていますが、断熱改修のないままに進められようとしています。
エアコンと断熱改修をセットで。大きな予算を、今。
体育館のエアコン設置が断熱未改修のまま進められた場合、エアコンが効くまでに時間がかかるだけでなく、冷気がもれ、暑い外気が入ってくるため、電気が無駄に。
冬の寒さも問題です。多くの体育館は災害時の避難所として使われますが、断熱がないと冷気が床の冷たさを増幅させます。能登半島地震の際には、体育館の床の冷たさが問題になりました。
エアコン設置だけでなく、内窓を設置する、天井に断熱を施すなど、断熱改修がセットで実施されれば、夏涼しく、冬暖かい体育館が実現します。エアコン設置台数も減らせてコスト削減できる上、電気代も半分ですむ*のです。
文部科学省は、体育館のエアコン設置を断熱改修と合わせておこなうよう促しています。しかし、各自治体予算で工事が行われるため、断熱も、となると費用がかさみ自治体は断熱改修に二の足を踏んでいるのが実情です。
いまこそ、国の支援の拡充が求められる時です。
体育館の断熱性確保による電気代削減効果について(試算)
断熱改修の費用は約4000万円(一体育館あたり)*と試算されますが、文部科学省は、それでも空調設置費用の大幅削減と年間電気代が約半額で済むことを考慮して、15年を経過すると「断熱した方がお得になる」として断熱改修を推奨しています。
出典(文部科学省): https://www.mext.go.jp/content/20230908-mxt_sisetujo-000010164_01.pdf
断熱改修で、夏涼しく、冬あたたかい体育館をつくる
予算について議論がはじまる5月、6月、7月に皆様の声を政府と自治体に届けます。断熱改修のセットが実現されるよう促していきます。
体育館の断熱が進めば、夏、熱中症の心配が減り、こどもたちの命が守られます。先生方の負担も減ります。また、避難所として使われるときも、暑さ、寒さから命を守り、災害関連死を防ぐことにつながります。
気候危機が深刻化する中、省エネもコスト削減も実現できる断熱は、気候危機対策として最も効果的な施策の一つなのです。
声をあげれば、変化は起こせる!〜お母さんたちが起こした断熱革命〜
横浜にお住まいの2児の母である梶本寛子さんたちは、教室の「暑すぎ」「寒すぎ」について、行動を起こしています。多くの人の力を得ながら実行委員会方式で2023年7月から 「学校の断熱改修を、早急に進めてください」 という署名を開始、8月には文部科学大臣に提出し、断熱の大切さを大臣に直接訴えました。
その後、文部科学省は 「学校施設のZEB化の手引き」 を発行。 「改修ZEBのススメ まずは断熱改修から」として、「ZEB化が達成できない⼤規模改修⼯事であっても、必ず実施していただきたい⼯事が、「断熱⼯事」です」と断熱が推奨されるようになりました。(ZEBというのは、消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のこと)
署名の力が、国を後押ししたと思っています。
しかし、断熱改修の実施は自治体の負担が高額になるため、断熱改修の実現には国のさらなる支援が必要です。
今年も猛暑が予想されています。子どもたちの健康をまもり、安心できる地域の備えを整えるためには、全国のみなさまの声が必要です。声をあげれば、変化は起こせることを梶本さんたちのストーリーは伝えてくれています。みんなの声で体育館の断熱改修を進めていきましょう。
私たちの暮らしを襲う気候危機は
まだ回避できます。
グリーンピースと一緒に解決を
気候危機は私たちの力で回避できます。気候危機の大きな要因は二酸化炭素の排出です。二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることが、気候危機に対していちばん大きなインパクトをもつ解決策です。そのためには、断熱などできる限りの省エネと、使うエネルギーのすべてをさまざまな自然エネルギーでつくり出すことが必要です。
技術はすでにあり、必要なのは政治的意思です。政治的意思は、私たちが声をあげることで作り出すことができます。
グリーンピースは、日本中で気候危機回避のために行動している市民をつなげ、お互いにたすけあうコミュニティ 「ゼロエミッションを実現する会」 をつくりました。
行動する市民を支え、力を大きくし、政治的意思を引き出します。
企業や政府から財政支援を受けず、政治的にも中立の立場を堅持しているグリーンピースだからこそ、できることがあります。あなたのアクションで、地球の恵みを100年先の子どもたちに届けられる社会をつくっていきましょう!
グリーンピースは、地球規模で起きる環境問題の解決に向けて、世界55の国と地域にあるオフィスと連携する日本支部として、活動を続けている国際環境NGOです。調査活動により現状を把握し、科学に基づいて解決策を提案しています。
グリーンピースが解説する気候変動と私たちに今できることを紹介するページをこちらでご覧ください。