東京電力は、2011年3月11日から発生した原発事故で溶けた核燃料を冷やすために、毎日数百トンの水を原子炉に入れています。また、山側から海側に流れている地下水が原子炉建屋に流れ込んでいます。これらの水は高濃度の放射能汚染水になっています。
回収できた分の汚染水は多核種除去設備(ALPS)などで処理され、1,000基以上のタンクに保管されています。

東京電力は、この汚染水のリスクを下げるため処理をしています。まず、セシウムとストロンチウムを分離、その後、他核種除去設備(ALPS)で、トリチウムと炭素14以外の62種類の放射能を分離することになっています。 この処理ではもともとトリチウムは取り除くことができません。さらに、2018年には、本来除去されているはずの他の放射性核種についても、排出基準値以上の量が含まれていることが明らかになりました。また2019年には、炭素14が除去対象となっていないことを東京電力が認めました。 東京電力や政府は”処理水”であることを強調していますが、”汚染水”であることに変わりありません。
放射能汚染水を海に流してはいけない3つの理由
1. 放射線被ばくによって遺伝子を傷つける可能性がある
トリチウムの半減期は12.3年です。リスクが無視できるレベルに低減するまでに120年以上かかります。人体に取り込まれれば遺伝子を傷つける恐れがあります。

汚染水の処理技術は想定どおりに機能しておらず、トリチウム以外にも、80%の汚染水でストロンチウム90やヨウ素129などが低い濃度で残っています。
炭素14の半減期は5,730年で、環境中に放出されればいろいろな生きものの身体に取りこまれることで、放射線被ばくによって遺伝子を傷つける恐れがあります。
2. 漁師など地元の人が強く反対している
福島だけでなく、全国の漁師が、汚染水の放出に反対しています。福島県森林組合連合会も反対の意見表明をしています。
福島県新地町で3代続く漁師の家に生まれた小野春雄さんの声を聞いてください。
東電は、福島の漁師さんたちに、関係者の理解なしにいかなる処分もおこなわないことを約束しています。*1
3. 国際法に反する
日本も批准するロンドン条約およびロンドン議定書では、人工的な放射能を含む汚染から海洋環境を保護することを求めています。
パイプラインから放出される放射能は、沿岸部の海洋環境に大きな脅威を与える可能性があり、放射能汚染水の海洋放出は、国際法違反です。
グリーンピースは、2021年の秋に行われた国際海事機関ロンドン条約の会議にグリーンピース・インターナショナル科学部門の海洋保護の専門家を派遣し、国連加盟国に直接訴えました。
*1 「東京電力(株)福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する要望書に対する回答について」
参照:ALPS処理水の海洋放出に関する東京電力の放射線影響評価報告書(案)(設計段階)予備的分析